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自己高揚欲求(self-enhancement)

私たちは自尊心を高く維持するために、自分の評価をできる限り高くしたいという欲求があります(これは他者からの評価に限らず、自分が自分を評価する場合にも当てはまります)。これが自己高揚欲求です。

この欲求に基づく現象には、次に述べる戦術的自己呈示やセルフハンディキャッピング下向きの比較などがあります。

防衛的戦術的自己呈示とセルフハンディキャッピング(self-handicapping)

自己表出において、印象を操作するために自分にとって望ましい自分のイメージを相手に伝えることを自己呈示と呼び、印象の操作を目的とせず、ありのままの自分を伝えることを自己開示と呼びます。

そして、自己呈示のなかでも、相手にとっての自分の印象が崩れないように防衛する意味で自己呈示をすることを防衛的戦術的自己呈示と呼びます。そしてその一つにセルフハンディキャッピングというものがあります。例えば、自信のない試験のときに、事前に他の人に「この試験はあんまり勉強してこなかった」と言って失敗してもそのせいにできるようにすることはその一例です。
人は、自分の能力に自信を持てないときにセルフハンディキャッピングをする傾向にあることが実証されています。

主張的的戦術的自己呈示

自己呈示のなかで他に、相手に対して自分の印象を積極的に形成するように自己呈示をすることを、主張的戦術的自己呈示と呼びます。相手に良い印象を与えようとする点で防衛的戦術的自己呈示と同じですが、主張的戦術的自己呈示は、印象を守るというよりは自分から積極的に印象づくりをするような自己呈示です。

主張的戦術的自己呈示には、以下のような種類があるとされています(JonesとPittmanによる分類)。
取り入り(ingratiation)…相手の好感を高めようとするために、自分の性格を強調しようとすること。例えば、好きな人の前で優しく振舞ったりすること。
自己宣伝(self-promotion)…ある技能や才能をアピールすること。自慢話や武勇伝など。逆に好感を下げてしまうということもあります。
示範(exemplification)…模範的で道徳的人物であるということを印象づけようとすること。「俺はみんなのために徹夜してまで準備したんだ」などと主張することはその一例です。
威嚇(intimidation)…自分は相手より立場が上であると威嚇すること。チンピラが肩を揺すって歩くことなどが当てはまります。
哀願(supplication)…自分はかわいそうな立場にあり、相手からの同情を買おうとすること。悲劇のヒロインを演じること。

自己像バイアス(self-image bias)

自分が重要と思うもので他人を評価すること、つまり自分が得意なことを重視して他人を評価することを自己像バイアスといいます。例えば、自分はスポーツは得意だけど勉強は得意でない場合、勉強は得意だけどスポーツが苦手な人をスポーツが得意不得意という基準で評価してしまい、評価が低くなるようなことです。

反映的名誉(reflected glory)

他人が優れた能力を持っているとき、その人と自分との関連性を主張し、自分の評価を高めようとすることを、反映的名誉と呼びます。友達の業績を自分のことのように自慢する人がいますが、それは反映的名誉を利用していると考えられます。

下向きの比較(downward comparison)

人は、自分を他人と比較して評価するとき、自分より高い能力・レベルの人と比較することを避け、自分より低いレベルの人と比較する傾向があります。これを下向きの比較と呼びます。これも自尊心を傷つけることを避けるための行動です。

"ドラえもん"の漫画にはのび太より勉強やスポーツができない男の子が転校してくる話がありますが、そのときのび太は「え、そんなこともできないの?」などと言って喜んで一緒に勉強や野球をします。人間の本性が顕著に現れた場面といえるでしょう。この傾向はのび太だけでなく一般の人にもいえることなのです。


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