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認知的不協和理論(cognitive dissonance)

例えば、自分が高いブランド物のハンドバッグを買ったとします。しかし、実際に使ってみると使い心地が悪く、とても良い製品とは思えなかったとします。このとき、「せっかく高いバッグを買ったのに良いものではなかった」という不快な状態が生じます。これが認知的不協和です。
人はこのようなとき不快な状態を避けるために、「使い心地は悪いが、デザインは優れている」と別の価値を見出そうとしたり、「使い方が悪いのかもしれない。」とか、「使い初めてまだ数日しか経ってないから良さが分かっていないのかもしれない」などと認識を変えることでバッグの価値を正当化しようとします。

ここまでの部分をまとめてみます。認知的不協和の「認知」とは、環境や自分自身に関する知識や意見、信念のことをいいます。上の例で、「バッグが高かった」、「バッグはいい製品ではなかった」、「バッグは使い心地が悪いがデザインは優れている」などです。
そして、関連する二つの認知には協和関係不協和関係があります。

協和関係とは、二つの認知の間に矛盾がないときのことをいいます。例えば、「バッグは高かった」、しかも「品質もよく満足だった」などです。
不協和関係とは、二つの認知の間に論理的な矛盾が生じているときのことをいいます。例えば上の例のように、「バッグが高かった」、しかし「品質がよくなかった」。

二つの関係で重要なのは不協和関係で、認知の間に不協和関係ができたとき、そこから生じる不快感を減少させるために二つの認知のうちどちらかを変化させることをします。

他の例として、

・喫煙量の多い人のほうが、喫煙しない人よりも、喫煙と肺がんの関係について証明されていないと考えることが多い(「喫煙が体に悪い」という認知と「自分は喫煙している」という認知の間で不協和がおき、「喫煙は体に悪いわけではない」と正当化しようとしている)。

・勉強が得意でない人の場合。「勉強は将来のために大切だ」という認知と「テストでいい点数がとれない」という認知の間に不協和が生じ、「数学なんて将来役に立たない」とか、「勉強が得意でなくても成功した人はいる」などと正当化することがある。

もっと詳しく

この理論を検証したのがフェスティンガーとカールスミス(Festinger,L&Carlsmith,J.M.,)です。彼らは実験参加者(Aグループ、Bグループ)に、とても退屈な課題を実行させました。そしてその課題が終わると隣の部屋で待っている別のグループの学生に「この実験は非常に面白かった」と嘘を伝えるように言いました。さらに、この実験参加の報酬としてAグループには1ドル、Bグループには20ドルが渡されました。実験参加者は別のグループの学生に伝言したあと、実験の印象について尋ねられました。

この実験の結果、1ドルを渡されたAグループは、20ドルを渡されたBグループよりも実験の内容が面白かったと報告しました。

この結果より、1ドルを渡されたAグループは、退屈な課題をやらされたという認知と、「楽しい課題だった」という嘘を他の学生に伝えたという認知の間で不協和を感じた、そこで、課題は本当に楽しかったのだと思い込むことによって、その不協和を解消しようとしたのだとフェスティンガーとカールスミスは考えました。

反対に、20ドルを渡されたBグループは嘘をついたことに対して、「課題は楽しくなかったが、20ドルをもらったから嘘をついたのだ」と理由づけをすることができ、不協和は小さかったのです。

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